メディア・コミュニケーション研究院長あいさつ

メディア・コミュニケーション研究院長の宮下雅年です。大学院メディア・コミュニケーション研究院は研究組織、大学院国際広報目メディア・観光学院は教育組織ですが、研究組織と教育組織は表裏一体の関係にあります。そこで、ここでは、主に将来の入学者を念頭に置いて、学院の特徴を説明することにより、研究院の紹介をしてみたいと思います。 本学院はこの長い名前にも現れているように領域横断的な性格を持った大学院です。そういう場合にはともすると全体的にモザイク状になってしまって、軸(だんご三兄弟の串)となるものが見えなくなりがちですが、各講座は、その名に盛り込まれている伝達や広報、言語、メディアという言葉が示唆する通り、基本的に人々のつながりの有り様やつながりの付け方の教育研究を目指していると言えます。
学生たちの学問的な関心も学院の構成に応じて多様ですが、たとえば平成22年度に提出された修士論文と特定課題研究のタイトルを眺めて大きく括ってみますと、その主たる関心は地域社会文化、経営、言語、公共性にあることがわかります。先の3つのカテゴリーはわかりやすいと思います。地域への関心が顕著なのは、特に観光創造専攻の学生は地域を抜きにして研究はほぼありえないからですし、また中国からの留学生が多いため、ジャーナリズムや広報の研究でも中国社会を対象または材料にして行われているからです。公共性には、細かく言えば、各種メディアを通じたネットワークづくりや交流、組織づくりが含まれ、信頼もそのキーワードのひとつです。
このような交流や組織形成等への知的関心が含意するものを考えてみますと、学生たちも人と人のつながりや共同体の絆(の再編)を火急の課題と考えているかに思われます。共同体には個人を縛り付ける掟(たとえば戦中の非国民呼ばわりや近頃のKYのような誹謗)やしがらみがあるけれども、学生たちはそういう脅威の面を承知のうえで(とにもかくにも恐れず、引きこもらず)、いわばバランス感覚を発揮して、「公」的なものに関わろうとする傾向が感じられて興味深いところです。実存的な事柄が棚上げにされているわけではありません。さまざまな関係の網の中で自分を充分に生かし、他人も自由に生かす、よりよい集団のあり方を追究し、身近なところでつながりを探っているのです。だから単なる現代社会批判に終わらず、その社会は可変的であり、そこに住まう我々にとってああしたりこうしたりする方がよりよく、住みやすいのではないか、という具体策の提示を目指していると思われます。もちろん、修論のすべてについて、その種の提言が説得力を伴って共感という橋を掛けるほど強固なものになっているのかはまた別問題です。
平成22年度の修士課程修了生にとって大きかった出来事は在学中に見られた政権交代だったかもしれません。近頃ではそれも額面どおりに受け取れなくなったとはいえ、それにしてもひとつ確実に言えることは、かつて自民党の長期政権を支えていたような身近なつながり、たとえば家族ぐるみや会社ぐるみ、町ぐるみという「○○ぐるみ」が破綻または崩壊してしまったことであり、また、ユートピアの壮大高遠なつながりもとうの昔に近代の夢でしかないことが判明して、それらをそのまま人生の支えにはできなくなったということです。かつてのつなながりがもはや人びとをつなぎきれないとすれば、それに代わって何をどうすればいいのか、この点で学生たちはつながり自体を廃棄したり断念したりするのではなく、それを世の宝(公共財)と見なして、新しいあり方を模索しようとしているように思われます。ましてや福祉国家的な給付金や手当てがねらいどおりに働いていないとすれば、また、最近の国勢調査速報値によるとますます「孤族化」が進むようだとすれば、新たな結び付きの模索は火急の課題になるわけです。
そういう知の立ち枯れを回避するために、本学院では学期始めに合宿研修(但しこれはまだすべての講座で行っているわけではありません)を行い、途中に修士論文中間発表会を開いて、全員が教員の集団指導を受けることになっています。博士後期課程ではこの集団指導が定期的、段階的に組まれ、重みを増しつつあります。また、多くの学生たちが院内外の共同研究プロジェクトに参加しています。特に観光創造専攻の学生たちは精力的に外に出ており、この2月の案内だけでも、登別で行う「観光創造フォーラム」、札幌中心部のさらなる活性化を考える「大通観光会ギ」、「ボランタリーツーリズム研究会」等に参加しています。国際広報メディア専攻のメディア文化論講座は昨年札幌と東京で『地域発・草の根文化の時代!』と題する公開シンポジウムを開催し、札幌では「北海道の草の根文化概観」や「草の根アート」の展示も行って高い評価を受けましたが、前者の展示は学生の手によるもので、これは特筆に値します。このようにして本学院では学生に現場感覚を培ってもらい、教育を有機的なものにしようとしています。
現場とのつながりと言えば、学生の関心は就職にあります。この6年間の修士課程修了者の就職先を見てみると、教育分野やIT関連の仕事に就く人が3割強と多いのですが、大手の新聞社や放送局にも1割以上が就職しています。これは創設10年余りの本学院としては実に驚くべきです。読売は4人、朝日2人、道新4人、NHK5人等々といった具合です。これはもちろん学生自身の奮闘の賜物でありますが、同時にまた、教員たちの熱意と涙ぐましい努力の成果でもあります。
本学院にはこれまで学生の就職指導を担当する委員会はありませんでした。そのため、教員が個別にそれに当ってきたのですが、それを今後は組織的に行い、学生への支援を手厚くしようと思っています。現在はインターンシップが単位化されており、これを活用する学生が毎年10数名いますが、これを就職にうまくつなげて行くのが今後のねらいのひとつです。
大学院進学をお考えのみなさん、これだけで国際広報メディア・観光学院の魅力を十分に伝えきれたとは思いませんが、このホームページの随所を参考して、本学院の特徴を知り、ご自分の将来像を練ってください。そうして是非本学院に入学してください。教職員一同、お待ちしています。
平成23年2月末日
宮下 雅年















