宇佐見 森吉 / USAMI Shinkichi

  • 宇佐見 森吉
    職名:
    特任教授
    担当分野:
    メディア文化論

担当授業

イメージ論演習

授業内容

イメージからメディアを考える

 授業では、私たちを日々取り巻いていて、時に心を惹きつけてやまないイメージの力について考える。イメージがその燦然たる輝きによって私たちを惹きつけるとき、そこにはいかなる力が働いているのか。人を虜にしてしまうほど魅力的なイメージがなぜ徹底的な破壊の対象に反転してしまうのか。こうしたイメージの生成と破壊の機構について、イメージの可視性と媒体について考察するほか、芸術におけるイメージの変容過程、現代文化における表象行為の意味についても考える。ロシア文化論が専門なので、近代ロシアの聖像破壊と展示空間についても論じる。受講者には視覚文化論、表象文化論、現代アート、イメージ人類学等に関心のある人が多い。

略歴・主要業績

早稲田大学大学院文学研究科ロシア文学専攻博士後期課程単位取得退学。共著書に『現代ロシア文化』(国書刊行会2000)、『文化の透視法』(南雲フェニックス2008)、『知っておきたいロシア文学』(明治書院2011)、共訳書に『ポエジヤ――言葉の復活』(国書刊行会1995)、『タルコフスキーの世界』(キネマ旬報社1995)ほか

北海道大学研究者総覧 個人ページ

所属学会

日本ロシア文学会、スラブ東欧学会

電子メール

usami@imc.hokudai.ac.jp

研究領域

ロシア文化、ロシア芸術

研究コラム

近年は、ソビエト政権成立期の教会閉鎖や、霊廟開設、文化宮殿建設計画といった首都のイデオロギー装置再編の過程について調べている。教会閉鎖に関する文献を読んでいてとりわけ興味深いのは、ボリシェヴィキによる聖遺骸開封の記録である。通常、教会で行なわれる遺骸の開封は、聖人に列聖するための証を得ることが目的だった。ところが、ボリシェヴィキは開封と称して、そうした由緒ある聖人の遺骸を科学の目にさらし、「ミイラ化した死骸」を映像に記録し、反宗教宣伝に利用したのである。ところが、レーニンが亡くなると、その遺骸もまた保存液に浸され、霊廟に安置されてしまう。わたしたちが今もこの戦闘的無神論の主導者に対面出来るのは、当時考案されたこの溶液のおかげだ。霊廟は広場の景観を一変させたが、そのデザインの変遷についても近年資料が公刊されている。ソビエト文化宮殿のコンペに加わった建築家たちの仕事についても詳細が明らかにされつつある。宮殿の建設予定地となったのはモスクワ河畔の救世主キリスト教会の敷地である。聖堂はスターリン時代に爆破されたが、宮殿の建設は技術的理由から実現には至らなかった。今、霊廟のある広場から河畔を見下ろすと、ソ連崩壊後、エリツィンの手で真っ先に再建された聖堂が何食わぬ顔でそびえ立っている。だが、ニューヨークの摩天楼の高さを凌駕するはずだった幻の宮殿は首都モスクワをどのような公共空間に作り変えようとしていたのだろうか。そもそも、ソビエト文化を体現する文化宮殿とはどんな施設だったのか。ソビエト社会の痕跡が急速に消滅していくなかで、この有名な宮殿建設のプロジェクトについても興味はつきない。