メディア・コミュニケーション研究院長  奥 聡

 メディア・コミュニケーション研究院は、言語文化部を母体とし2000年に設置された国際広報メディア研究科にその起源を持ちます。当時、北大で最も新しい文科系の大学院組織でした。その後、2007年に大きな改組が行われ、教員所属組織として、「メディア・コミュニケーション研究院」が設立されました(言語文化部および国際広報メディア研究科は発展的に解消)。同時に、北大の大学院重点化に合わせる形で、大学院生が所属し学ぶ組織として「国際広報メディア・観光学院」が設立され、メディア・コミュニケーション研究院所属の構成員は、国際広報メディア・観光学院、または教育学院のいずれかで大学院教育の中核を担う研究者集団となっています。

 このようなユニークな成り立ちが、現在の本研究院の特徴ある活動、強みにつながっております。言語文化部時代は、言語(教育)研究、文学を含む地域文化研究などが主な専門的研究分野でありましたが、大学院の立ち上げとともに、ジャーナリズム研究、国際広報論研究、メディア文化研究などを専門とする多くの研究者を加えて、2007年の改組の際には国際地域文化研究、観光学研究を専門とする仲間を増やしてきました。同時に本研究院所属の多くは北大の外国語教育の責任部局である外国語教育センター兼務教員として、北大学部生全員の外国語教育の中核を担っており、また、北大で最初の英語で入学できる学士プログラム「現代日本学プログラム」を担っている教員も本研究院の所属となっております。さらに、本研究院の外国語教育研究部は10名の外国語母語話者教員により成り立っております。このように、多彩な背景を持つメディア・コミュニケーション研究院の教員は北大の学士教育を支えております。

 こうした背景から、本研究院における研究内容も、多彩多様で、分野領域横断的なものも少なくありません。また、本研究院には付属組織として「東アジアメディア研究センター」および「メディア・ツーリズム研究センター」があります。国内外の研究者や組織と連携しながら、広さと深さを持ったさまざまな研究が行われております。本研究院では、第4期中期計画(2022年度〜2027年度)の4本柱として、「1. SDGs達成への貢献」「2. 地域興し(地域の課題解決、人材育成)」「3. 国際社会の発展に寄与する人材育成」「4. メディアと観光の融合」を掲げております。これは現在、本研究院の各構成員が取り組んでいる研究、計画中の研究を自由に推し進めていくことによって、しっかりと達成できるものであると確信しております。なぜならば、「地域興し」「メディアと観光の融合」にかかる具体的な研究に取り組んでいる構成員も少なくないばかりでなく、本研究院で行われているほとんど全ての研究が「SDGs達成への貢献」「国際社会の発展に寄与する人材育成」に何らかの形でつながるものばかりであるからです。SDGsというと、すぐに役立つ理系的な研究をイメージしやすいかもしれませんが、本研究院の中核である「公共ジャーナリズム」「国際広報」「メディア文化」「言語コミュニケーション」「国際地域文化」「多元文化」は全て他者を理解するという「世界の平和」「平等」という方向につながっていく研究ばかりなのです。

 ここ3年は新型コロナウィルス感染症の影響で、多くの研究活動が制限されてきました。まだまだ完全終息とまではいきませんが、社会も私たちもコロナとの「賢い付き合い方」がある程度分かってきたと思います。コロナに制限されない活発な研究活動が再開されつつあります。新しい成果の報告に大いに期待したいと思います。

2023年4月1日
メディア・コミュニケーション研究院長
奥 聡