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研究院紹介

教員プロフィール一覧

渡辺 将人 / WATANABE Masahito

職 名:
准教授
専 攻:
国際広報メディア専攻
担当分野:
ジャーナリズム論

担当授業

米国政治メディア論演習

授業内容

現代アメリカの政治的イデオロギーをめぐるメディアの諸相

アメリカでは政党のみならず国民世論が、保守とリベラルに分極化しているが、その過程におけるメディアの機能は無視できない。メディアが保守とリベラルに分かれて対立軸の増幅を演出するなか、1990年代以降2極化は激しさを増し、討議型民主主義の空虚化が指摘されている。他方、アメリカにおける保守とリベラルとは思想であると同時に、コミュニティの地域性、人種およびエスニック起源、信仰などが半ば集団的に規定することも少なくない。市民のアイデンティティが政治を媒介にメディアと深い関係性を持っている。また、アメリカでは内政が外交まで定義することも少なくないが、為政者たる議員の政策は選挙区の利害に縛られる。アウトリーチという集票戦略は、こうした関係性の「縮図」であるが、その過程でメディアは、無料の宣伝媒体として政治に関与するジレンマも抱えている。アメリカの政治過程を事例に政治とメディアの多層的関係を検討したい。

経 歴

シカゴ大学大学院国際関係論修士課程修了(MA, International Relations)。早稲田大学大学院政治学研究科より博士(政治学)取得。2001年よりテレビ東京報道局にて「WBS」、政治部記者(総理官邸、外務省担当、野党キャップ)、社会部記者(警察庁担当)。コロンビア大学・ジョージワシントン大学客員研究員(2008-2010年)を経て現職。専門はアメリカ政治・外交。主著に『現代アメリカ選挙の変貌』(名古屋大学出版会)、『現代アメリカ選挙の集票過程』(日本評論社)、『評伝バラク・オバマ』(集英社)、訳書に『アメリカ西漸史』(東洋書林・第50回日本翻訳出版文化賞)ほか。

所属学会

アメリカ学会、日本選挙学会

電子メール

masa.watanabe@imc.hokudai.ac.jp

研究領域

アメリカ政治・外交 利益団体 議会 選挙過程 政党 大統領制 

研究コラム

 『知のフロンティア−北海道大学の研究者は、いま−』

(北海道大学 学務部入試課編)p. 172-173. 
「アメリカの民主政治を選挙過程から分析する(大学院メディア・コミュニケーション研究院 准教授 渡辺将人)」より転載
 
<現在の研究と取り組むに至った経緯は何ですか?>
 アメリカの政治と外交を専門としています。アメリカの大学院で国際関係論を専攻しましたが、現地で政治実務に携わったことも後の研究に多大な影響を与えました。連邦下院議員の事務所に勤務したほか、クリントン大統領夫人(当時)の上院議員選挙にも参画しました。参与的観察として貴重な財産となり、内政から外交までを選挙区の利害から読み解く基本を吸収しました。人種やエスニシティ、宗教などの属性、環境保護等の特定問題をめぐるイシュー・ネットワーク、そして人工妊娠中絶や銃所持などシングル・イシューを訴える利益団体が、議会、選挙、政治運動、メディアを舞台に、どのようなメカニズムで政治を動かすのか、選挙区対応の実務から学んだことが背景にあります。
 例えば、どこまで世界の問題に介入すべきか、軍事予算はどの程度が適当か、自由貿易協定を結ぶべきか等、純粋に外交政策にみえる問題にも、国内の経済や労働問題、リバタリアンとかネオコンと呼ばれるような政治理念、大統領支持率と内政の進捗などが密接に関係しています。大統領の外遊や演説も、重要法案の審議動向に左右されます。エスニック集団や教会は、特定の国や争点に関係した政策を強く望むこともあります。
 アメリカは民主党と共和党の二大政党制ですが、政党を横断して内政から外交まで争点ごとに偏在する保守とリベラルの潮流も、政治の大きな動力です。
 
<どのような方法で研究しているのですか?>
 アメリカはとかく「日米関係」の延長物として理解されがちです。しかし、アメリカ政治固有の力学に注視し、アメリカを内側から理解することも大切です。それが結果として、日米関係を深く考察することにも役立ちます。そのためには、アメリカの歴史と制度を学ぶことが欠かせません。州と連邦の関係、アメリカ的保守主義やリベラリズムの特色なども重要です。また、アメリカはメディアとりわけ放送メディアの先進国でもあります。しかし、近年では保守色を鮮明にする言論装置的な放送局も日常化していますし、新聞社は伝統的に特定の候補者への支持を打ち出します。メディアの社会的な位相は国や地域によって異なりますが、保守とリベラルの対立軸を演出するアメリカ的なメディアの特徴も、政治的な文脈から検討することで浮き彫りになるでしょう。
 私の研究では聞き取り調査や参与観察に基づく質的研究も実践します。 政府史料などアーカイブが未解禁の研究においては、情報源へのアクセスが大きな優位性を持ちます。政策過程では些細なことが決定的意味を持つことも少なくありませんが、多くは資料として文字化されず当事者の「記憶」に埋もれていきます。市民運動や利益団体などの非政府アクターについては、記録の公開も制度化されていません。流動的な政治過程の実相を明らかにする上で、聞き取り調査や参与的観察による補完が求められる領域と言えます。
 2004年の大統領選挙の総括調査をアメリカでしたことがあります。敗北した民主党内には、信仰心の強い選挙民が民主党離れをしている危機感があり、共和党系「宗教右派」への対抗として、穏健福音派やカトリック教徒による「宗教左派」を盛り上げる動きが勃興していました。事例として貧困対策に注力するキリスト教団体を2005年の設立準備段階から、毎年、継続調査をしました。この運動が2008年にオバマ当選の草の根基盤となり、運動の発起人も複数、政権入りしました。当初「宗教左派」調査は、オバマの調査ではありませんでしたが、結果として選挙戦や政権を理解するのに不可欠な調査に発展していました。中長期の政治的文脈観察には忍耐力も要りますが、政治のうねりが連続性のあるものとして見えてくる面白さがあります。
 
<アメリカ政治を学ぶ意義は何ですか?>
 政治経済から文化まで日本に深い影響を与えるアメリカですが、身近な存在のようで意外に正しく理解されていません。今や渡米経験者は珍しくありません。しかし、経験の多くは観光、ビジネス、留学などに限定されがちです。観光地、都市、大学空間はアメリカの平均でも全体でもありません。あなたにとっての「アメリカ」とは何ですか?現政権ですか?市民ですか?歴史的存在ですか?南部ですか?都市ですか?モノやデザインですか?アメリカを知ることは、多様性と向き合うことです。海外をどのように認識するか、メディア情報とどう付き合うか、そうした骨太の「知」を北大で育ててほしいと願います。
 
参考書
『見えないアメリカ』講談社現代新書(2008),『現代アメリカ選挙の集票過程』日本評論社(2008),『オバマのアメリカ』幻冬舎新書(2008),『評伝 バラク・オバマ』集英社(2009),以上、渡辺将人著,『オバマ政権のアジア戦略』ウェッジ(2009)久保文明編,『戦争とテレビ』みすず書房(2004)ブルース・カミングス著,渡辺将人訳.