私がセンター長を務める北海道大学の外国語教育センターでは毎年、新入生に「外国語学習お助けガイド」というパンフレットを配布しています。4つ折りになったカラーのパンフレットには北大で提供している外国語学習や外国語を使った学びのリソースに関する情報がいろいろと載せられていて、新入生が学部4年(ないしは6年)間、また人によっては大学院生になってからも折に触れて参照してもらえるように、「保存版」という文字も書かれています。(PDF版はこの外国語教育センターのHP上でも見ることができます。)

 大学が外国語学習に適した場であるというのは、多くの人が感じていることかもしれません。外国語の十分な習得には時間もエネルギーもかかります(「楽して〜語がペラペラに」という教材の誘い文句は残念ながら、多くの人にとって気休めにすぎません)。大学時代にじっくりと時間もエネルギーも費やして外国語を身につければ、その後の研究や仕事など将来に役立つかもと思ってはいても、果たしてどこから手をつけていいのか、また大学内にどのようなリソースがあって、それを活用するにはどうすればいいのか、多くの学生は実はそういう情報を求めているのでは?という発想からこの「お助けガイド」は生まれました。

 私たちのセンターが実際に提供しているものとしては、全学教育における英語および初習外国語(中国語、フランス語、ドイツ語、韓国語、ロシア語、スペイン語)科目の他にも、オンラインでアクセスできる教材、自律学習のサポート(例えば、図書館との連携で行っている英語多読プロジェクト)などがあります。また、継続的に外国語学習を行いたい院生や教職員が一部の全学教育の演習科目に参加できる「外国語特別講義」という仕組みもあります。また、演習として学習機会が提供される外国語には上に挙げたものの他に、チェコ語、フィンランド語、インドネシア語、トルコ語、ギリシア語、ラテン語などの多様な言語も含まれています。

 また、主に全学教育の外国語教育に携わっている私たちの部局でも、このガイドを作る過程で、各学部・大学院で外国語を使った専門教育がどのように行なわれているかという情報に触れるという副産物がありました。大学というのは大きな組織ですので、他部局で行なわれている取り組みを意外と把握できていないものです。全学教育を終え、学部に移行した学生や院生たちが専門教育の中で外国語を使いながら学ぶことは今や当たり前のことになっています。特に入学したばかりの1年生にこれからの展望を持ってもらうためにも、このような情報は大変、貴重です。

 この「お助けガイド」には「北大で世界と出会う」という副題がつけられています。これは、札幌や函館のキャンパスにいながらにして北大で準備されている授業やリソースを活用すれば触れられる「世界」がそこにあることを意味しています。そして、それは言語というツールの習得にとどまらず、その背後にあるさまざまな文化や価値観に触れることでもあります。言語(ことば)の学びは世界への扉を開く、とよく言いますが、外国語教育センターはそんな、世界への扉を少しでも開きやすくするお手伝いをする、そういう組織でありたいと思います。

2023年4月
北海道大学外国語教育センター長 濱井 祐三子