公共伝達論分野どんな時代にあっても「公共」は社会の最大のテーマである。

分野概要

現代社会における公共的コミュニケーションのあり方を基礎的に研究する講座。3つの観点からこの課題に取り組んでいる。1)「公共性」の分析。グローバル化の進展や自然環境の変化に伴い現代社会は様々なリスクを経験しているが、そのような状況における「公共性」とはいったい何を意味し、どのような意義を持つのか。歴史的・地理的・思想的・社会学的など、多彩な観点から分析を行う。2)国際的・社会的コミュニケーションの理論と現状分析。新聞・テレビといった従来のメディアに加え、インターネットのような新しいかたちのコミュニケーションの現状分析、さらには、文化的・言語的共生のあり方についての実践的・理論的研究を行う。3)社会的意思決定・合意形成のメカニズム解析と方法論開発。科学技術の社会的受容や社会的公正などに関して、各種ステークホルダー間の対立や価値に関する構造解析と新たな方法論の開発を行う。具体的なフィールドを支える準拠枠の提示とその妥当性の検証を行う。

分野の教育目標

公共的コミュニケーションに関する基礎的知識と考え方を獲得するとともに、社会的に解決が望まれている様々な問題に対する実践的提言能力を養う。1)「公共性」やメディア、合意形成に関して、基本的な理論を学び、多彩な社会科学の方法論を身につける。2)様々な社会的課題に関して、実践的提言につながるような分析能力と公共的なセンス、発信力を養う。3)現代に適した公共性のあり方を考える上で必要な理念や価値、目的に関する理解力・判断力・応用力を深める。

分野活動紹介

公共伝達論講座のスタッフが取り組んでいるのは、政治社会思想、知識社会論、メディア・コミュニケーション理論、近代国民国家論、社会的マイノリティ研究、多言語性の研究など多岐にわたる。しかし総じて言えることは、研究院・学院の活動全体の基盤となるようなメタレベル的で分野横断的な研究、個々の事例に肉薄するためのフィールドワーク(日本、ヨーロッパ、アフリカ、ラテンアメリカ)、そして国際的な研究ネットワークの構築に力を入れている、という点である。
 例えば平成22年(2009年)6月に企画した国際シンポジウム『超国家的枠組、標準化、ネットワーク化:ヨーロッパ、日本、アフリカの組織的多様性マネージメント』では、マクロ・ミクロでの組織的な多様性管理 Diversity Managementを現代における最重要課題と位置づけ、多角的な検討をおこなった。これは、北イタリアの研究機関 EURAC (European Academy of Bozen/Bolzno)との緊密な協力のもと、ナショナル・マイノリティ、移民、地域紛争、政治統合といったさまざまな現代的事象を一括して議論するという野心的な試みで、幸い全国から140名もの参加者を集めた(「北大時報」の記事を参照:http://www.hokudai.ac.jp/bureau/news/jihou/jihou1007/jihou1007.pdf)。その副産物として、マイノリティ問題に関するEURACガイドブックの日本語版が、近々講座の監修で刊行される予定である(翻訳作業には学院の博士院生が多数参加した)。また同じくフォローアップ的なイベントとして、シンポジウムの理論的枠組みのひとつとなった「言語管理理論 Language Management Theory」に関する講演会が、ヨーロッパから一線の研究者を招き、年度末に開催されることになっている。
 平成23年度については、一般社会人を対象とする公開講座『新しい<公共>の形』の開催がすでに決定している。これは講座の研究成果を社会に還元するための取り組みで、今回は日本でも年々関心が強まっている「公共性」に焦点を当てる。講座スタッフは、理論的な概観を提供するグループと、世界各地における公共性のあり方や議論の方向性を検討するグループとに分かれ、新たな知見を掘り起こす準備を進めている。
先端的かつ普遍的テーマに正面から取り組むこと、それが公共伝達論講座の研究教育上の使命だと言えるだろう。

担当教員

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