2018年8月21日【更新】2019年度 国際広報メディア・観光学院が生まれ変わります

 北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院の前身の国際広報メディア研究科は2000年に設立されました。その目的は、広報とジャーナリズム、メディアと文化、言語とコミュニケーションという異なる領域を融合し、現代社会のさまざまな課題にこたえうる有為な人材を育てることにあります。
 その後、2007年度に観光創造という学問領域を加えて、国際広報メディア・観光学院が誕生しました。国際広報メディア・観光学院では、「国際広報メディア専攻」と「観光創造専攻」という二つの専攻を配置し、さらに領域横断的な教育研究を行ってきました。 
 そして、国際広報メディア研究科が設立されて20年をむかえる来年2019年度、国際広報メディア・観光学院は生まれ変わります。

 学院では、国際広報メディア専攻と、観光創造専攻を一つにして、「国際広報メディア・観光学専攻」となります。その目的はメディアと観光の融合にあります。メディアと観光の融合といってもなかなかイメージがしにくいかと思います。身近な例をあげて説明しましょう。
 私たちは旅に出る前にインターネットなどのメディアで多くの情報をえて旅程を組み、空想をふくらませます。旅の途中で、スマートフォンで訪れた場所の印象を発信します。そして、家にもどってからは、写真をネット上に掲載する、ということもあるかと思います。これはメディアと観光の接点の日常的な例ですが、メディアによって地域のイメージが形づくられ、さらに人の移動が促される。また、観光がメディアにおけるコミュニケーションを活性化させる。そのような事例は数多く見受けられます。映画やアニメの舞台をたずねるコンテンツ・ツーリズムといった現象もメディアと観光が接近する象徴的な例です。メディアと観光はさまざまな領域において接点を増やしているのです。
 ただし、このメディアと観光の融合は、経済の活性化のためだけに求められているのではありません。日本は少子高齢化がすすみ、人口が減少し、地方が衰退しつつあります。しかし地域には潜在的な魅力がたくさん埋もれています。それを、メディアを通じて知ってもらい、地域のあらたな価値を発見し、作りなおし、活力ある地域をつくりあげていかねばなりません。その際、地域が協力すること、さらにそのような取り組みに国際的な視野を持って行わねばならないことは言うまでもありません。そうしてこそ、地域の持続可能な発展が可能となるのです。
 特に、私たちが住む北海道は、豊かな自然をもつ魅力あふれる場所です。それゆえに、北海道というこの地にメディアと観光の融合をかかげる大学院を設置することは極めて意義深いことだと考えます。
 付け加えると、国際広報メディア・観光学院は、メディアと観光が融合した領域のみを学ぶ場ではありません。関連する領域を広く研究することが可能です。メディアに関連する学問であれば、研究科設立以来、研究成果を蓄積させてきた、公共ジャーナリズム、国際広報、メディア文化、そして言語コミュニケーションに関わる領域、観光であれば、観光文化、交流共創、地域経営、国際開発に関連する領域の研究に取り組むことができます。さらに、メディアと観光の現場を深く知るために、第一線で活躍する実務者による演習も多数開講されています。
 それらの専門科目を履修する前に、研究方法、調査方法などの基礎的な科目が設定されており、学部でメディアと観光を専門としてこなかった、文系・理系いずれの学生にとっても、無理なく学べるカリキュラム構成となっています。また、社会人学生に向けて、研究と仕事の両立を可能にする時間割編成や長期履修制度を用意しております。こうして、留学生を含めた多様なバックグラウンドをもった学生が、専門性と学際性のバランスを取りながらそれぞれの研究をすすめていくことが可能な教育体制を整えています。
 さらに、教室の外にでてフィールドで学ぶプログラムも用意しておりますし、また、海外の学生と本学院の学生が共同で、多言語で学ぶ場(TLLP: Tandem Language Learning Project)も準備しています。
 広くメディアと観光に関わる学問領域を、地域に立脚し、同時に世界的視野を持って学ぶ場、それが国際広報メディア・観光学院です。
 ぜひ、国際広報メディア・観光学院への入学をご検討ください。

現在は国際広報メディア専攻と観光創造専攻の2専攻。改組後は国際広報メディア・観光学専攻(仮称)の1専攻2コース体制に。

国際広報メディア・観光学院が養成する「観光メディア人材」像
国際広報メディア・観光学院が養成する「観光メディア人材」像

新学院創設の背景と特徴
 本学院は、来年度から新しい体制とカリキュラムのもとで、研究の推進と人材の育成を加速することを計画しています。基本方向は以下の4点です。
1. 変わるメディア―新しいコミュニケーション
 近年の最も大きな環境変化のひとつは、情報通信技術の革新によって、人間のコミュニケーション、情報伝達の構造が大きく変化している点です。具体的には、デジタル・コミュニケーション技術の進展によって、放送と通信の垣根の消失、従来型マスメディアへの需要の低下、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・システム)の台頭などです。
 本学院では、このようにコミュニケーションの構造が大きく変化している中で、今後も新しいコミュニケーション創造の研究を推進していきます。

2.変わる観光―国際化と地方創生
 インバウンド観光客の急増、アニメなどのコンテンツ・ツーリズムへの国際的関心の拡大、口コミ情報の重要性の高まりなど、従来の観光需要も国際的になり、その需要創造の構造も大きく変化してきています。
 一方、北海道を始めとして、地方は人口減少の影響を最も大きく受けています。地方創生へのニーズはこれまで以上に強く、観光分野においては、自治体、企業、地域住民の協働など、地方創生への取り組みを一層高める必要性があります。この際、新しい情報メディアの活用が重要な視点になります。

3.よりグローバルに―国際共同、学際研究
 本学院のメディア、観光に関する研究、教育推進の大きな特徴のひとつは、グローバル化する課題解決に対して、国際的な共同、学際的な研究を推進することに注力している点にあります。この国際共同研究のこれまでの実績には、以下のようなものがあり、今後より一層強化していきます。
①東アジア・メディア研究
②多文化・多言語環境研究
③コンテンツ・ツーリズム研究
④インバウンド・ツーリズム研究

4.より実践的に―トップ企業との連携講座
 もう一つの学院の特徴は、より実践的な教育と研究の推進のための産業界のトップ企業との連携の推進と共同研究への取り組みの強化です。産業界との主な連携企業は以下の通りとなっています。
①株式会社野村総合研究所
②株式会社読売新聞東京本社
③株式会社電通
④株式会社ジェイティービー
⑤ヤフー株式会社