国際広報メディア・観光学院長  西川 克之

2019年4月から、本学院は従来の国際広報メディア専攻と観光創造専攻からなる二専攻体制をあらため、国際広報メディア・観光学専攻の一専攻として再出発いたしました。以下ではその改組の意図するところについて述べさせていただきます。

現代社会をもっともよく特徴づける事象の一つは流動性の高まりでしょう。情報コミュニケーションは短期間でモバイル化が進み、物流サービスのネットワーク上を休むことなく大量のモノが運ばれ、単なる情報と化した資本が瞬時に移動を繰り返しています。人の移動も常態化しその空間もグローバルな規模でどんどん拡張しています。近代社会の特質としてマルクスが喝破した堅固なものの溶融がいま新たな局面に差し掛かっているという感覚を私たちは免れ得ません。

国際広報メディア・観光学院は、こうした人・モノ・資本・情報の移動性が極大化した時代における広報コミュニケーション、メディア、観光のあり方に関わる教育・研究を領域融合的に実践する極めてユニークな高等教育機関です。企業や自治体の広報活動は情報の受け手との双方向的なコミュニケーションを前提としなければもはや成り立ちませんし、それは世界中の人の目に触れるという可能性を意識したものであらざるを得ません。また、情報コミュニケーション技術の発達によって急速に発展したソーシャルメディアはもちろんのこと、テレビや新聞などの従来的なマスメディアも、多対多のネット空間で流通する膨大な情報の海の可能性や限界に向き合わないわけにはいきません。さらに、東アジアをはじめとした経済成長が著しい地域を中心に、移動手段の高速化や情報メディアの多様化という要素とも連関しながら、ほんものとの出会いや異文化との接触を求める観光者の数は飛躍的に増大しています。加えて、こうした情報環境の激変と、社会的交流の拡大によって、少子高齢化に悩む地方地域においてさえ多言語化、多文化化したコミュニケーション環境と無縁ではいられなくなりつつあります。本学院は、2000年に前身である国際広報メディア研究科を創設し、また2007年に二専攻体制の学院に改組して以来、こうした社会環境の変化に伴って発生するアクチュアルな諸課題を解決に導いていくことのできる資質や能力を備えた専門的人材を数多く養成してきました。

さて、こうした教育研究の実績を踏まえつつ、今回の改組によって本学院が目指すのは広報コミュニケーション、メディア研究と観光研究とのさらなる融合です。今後も情報メディア技術の開発はさらに勢いを増して継続し、従来の情報や資本のみではなくさまざまなモノもインターネットでネットワーク化する構想が政策的に進められようとしています。こうしてあらゆるものが情報としてネットワーク上に流通、流動する社会が私たちの目の前に迫っています。一方でまた、観光をはじめとした人的移動や流動も、社会や経済のさらなるグローバル化を背景として拡大していくことは間違いないでしょう。こうした堅固なものはどこにもないと言い得るような社会変容と向き合い、その背景にある多面的で錯綜した要因を解きほぐしながら探り当て、もって新たに現出する課題を解決して価値を創出できる人材を養成するためには、これまで以上に複合的で融合的な教育プログラムが必要です。本学院は、メディアと観光を専門とする知の集合体という独自性を元手にしつつ、柔軟な協働や臨機の融合という要素を加えることによって、次の社会を見据えて新たな段階に踏み出しました。ここにしかない観光とメディアの融合の場に、多くの皆さまが参画していただくのをお待ちしています。

2019年4月1日
西川 克之