国際広報メディア・観光学院長  奥 聡

 国際広報メディア・観光学院は、2000年に設立された国際広報メディア研究科にその起源を持ちます。当時、北大で最も新しい文科系の大学院として、メディアやコミュニケーションの分野で活躍する高度職業人を養成することを目指しました。2007年には大きな改組が行われ、国際広報メディア専攻に観光学専攻を加え、2専攻からなる国際広報メディア・観光学院が誕生したのです。日本政府が2006年に観光立国推進基本法を制定したのと呼応するものでした。さらに、2019年には組織強化と研究の一層の融合のために、1専攻(国際広報メディア・観光学専攻)へと改組を行い、現在に至っております。

 本学院を支える教員集団は、メディア・コミュニケーション研究院所属の教員を中心に、観光学高等研究センター(通称C A T S)の教員、高等教育推進機構国際教育研究部の教員、情報基盤センターの一部の教員、アイヌ共生推進本部の一部の教員で構成され、さらに社会との連携を図るために、一般企業からの客員教員もおります。

 こうした教員集団のもと、学院は2つのコースからなっています。国際広報メディア研究コースは「国際広報」「公共ジャーナリズム」「言語コミュニケーション」「メディア文化」の4講座からなり、観光学研究コースは「観光文化」「交流共創」「観光地域経営」「国際観光開発」の4講座からなります。実際に学生はどのコースの科目も履修することができ、まさに分野横断型の研究でも、1点を深く掘り進める研究も自由に行うことができます。

 現代の多様で複雑な社会では、1つの価値観、1つの立場だけから物事を見たり、評価したり、何かを実行したりすることはもはやできないでしょう。研究も多様なものの見方、多角的な視点を持ちながら、進めていかなければ「独りよがり」の結果になってしまうかもしれません。多くの難しい課題を抱えた現代社会において、異なる他者を理解し、公共的なコンセンサスを形成してゆく力は、誰にとっても不可欠なものでしょう。北海道大学には長い教養教育の伝統があります。教養教育とは英語でliberal arts、そしてここでのliberalとは「他の人の考え方(特に自分とは異なる考え方)を尊重し、理解しようとする心」をその基本的な意味として持っています。本学院での学びの本質は、各自の研究テーマを深めていく中で、そのようなliberalな心を身につけていくことであると考えます。

 新型コロナウィルス感染症も少しずつ落ち着いてくるでしょう。本学院が、教員との、そして学生同士のさまざまな議論や交流によって、地域社会にまた世界全体に力強く貢献していける人を育んでいけるように、力を注いでいきたいと思います。

2023年4月1日
国際広報メディア・観光学院長
奥 聡