国際広報メディア・観光学院長  河合 靖

2000年には、「公共的なコンセンサス形成の理論と実践」をテーマに国際広報メディア研究科が設立されました。メディアやコミュニケーションの分野で活躍する研究者や高度職業人を養成するための大学院を目指していました。日本が観光立国を表明したことを受けて、2007年に観光創造専攻が加えられました。大学院の名称も国際広報メディア・観光学院に変更されました。 2019年には、研究の一層の融合のために2つの専攻が国際広報メディア・観光学専攻に統合されました。

私たちの大学院は、国際広報メディア研究コースと観光創造研究コースに分かれています。これらのコースの科目群は、移動と交流、異文化間の相互理解と共存に焦点を当てています。国際広報メディア研究コースは、「国際広報」、「公共ジャーナリズム」、「言語コミュニケーション」、「メディア文化」の講座で構成されています。また、観光創造研究コースには、「観光文化」、「交流共創」、「観光地域経営」、「国際観光開発」の講座が含まれます。

交通手段の改善(航空機による移動)と情報通信技術の変化(インターネットの普及)により、物理空間と仮想空間の両方で、人、物、情報の大量の移動と交流が可能になりました。新たな機械翻訳技術により、対面およびオンライン両方でのコミュニケーションで、言語の壁が徐々に崩れてきています。人々は、文化的および言語的に多くの集団に分岐し、層状に存在しながら、交流を余儀なくされていくでしょう。

同時に、私たちは地球規模の気候変動による災害と天然資源の枯渇に直面しています。海洋プラスチック、砂漠化、酸性雨、オゾン層破壊、放射性廃棄物などの環境問題は、一国の努力では解決できません。さらに、新しいコロナウイルスであるCovid-19は、衰えることなく広がり続けています。2015年、国連サミットは持続可能な開発目標(SDGs)を採択しました。これらの目標には、グローバルなパートナーシップの発展、人と国の不平等の根絶、人が住み続けられる町づくり、すべての人の平和と正義の実現、ジェンダー平等の実現、質の高い教育の公平な普及、そして働きがいと経済成長の両立が含まれます。自分たちの利益だけに拘泥していては、これらの危機を克服することはできません。私たちは、グローバルな視点を持つ必要があります。

こうした危機に直面して、OECD(経済協力開発機構)は、これからの人材に必要な3つのキー・コンピテンシーを掲げています。
(1)社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力。(言語とテクノロジー)
(2)多様な社会集団のなかで人間関係を構築する能力。
(3)自律的に行動する能力。
日本では、文部科学省がこれらのキー・コンピテンシーの考え方を取り入れて、新しい学習指導要領を改訂しています。同省はまた、学習指導要領に「主体的・対話的で、深い学び」というキーワードを盛り込んでいます。

前述のように、世界の人々は今、集団間の利害関係を克服し、前例のない地球規模の問題を解決するために協力する必要性に直面しています。現在の移動と交流の時代において、異文化の相互理解と共存のためには、公共的なコンセンサス形成の理論と実践に関する研究が不可欠です。本大学院は、設立以来、プロジェクト演習や外部の専門家による連携講座の実施を特徴とする実践的な教育に重点を置いてきました。北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院の研究が、世界全体の福利の実現に貢献することを願っています。

2021年4月1日
河合 靖