城山 英巳 / SHIROYAMA Hidemi

  • 城山 英巳
    職名:
    教授
    担当講座:
    公共ジャーナリズム論

担当授業

《大学院》中国メディア論演習、ジャーナリズム事例演習、調査報道事例演習、メディアリテラシー、国際政治経済政策事例研究
《全学教育》ジャーナリズムの現在、調査報道入門、中国語Ⅰ、中国語Ⅱ、中国語演習

授業内容

「中国メディア論演習」では、「メディア」を通じて現代中国や日中関係に対する視座を議論する授業を展開します。
私自身は、現代中国や日中関係史を研究しています。選挙で指導者が選ばれない権威主義体制・中国共産党政権の最高指導者は常に、統治の「正統性(legitimacy)」の問題に対する答えを民衆に示さなければならない宿命にあります。言い換えれば、「なぜ中国は共産党が統治しなければならないのか」という問いです。
かつては経済発展、GDP成長あるいは豊かさを実現することで、その正統性を保ってきましたが、今は「強国」であることを誇示しています。その結果、外部との摩擦を抱えていますが、中国が台頭する中で、中国が自己認識する「中国」と、日本を含めた国際社会が認識する「中国」のギャップが摩擦をより大きなものにしています。
「中国」は、政治、外交、経済、社会、文化、歴史など見る方向によって、あるいは見る人の認識や立場によって、「違った中国」が見えてきます。さらに「変わる中国」と「変わらない中国」が並存しています。その本質を捉えることは非常に難しく、われわれにとって「中国」とどう向き合うかという問題は永遠のテーマです。
私は、研究で次のような視座で、「現代中国」を観察しようと努めています。
➀「中国」とは何なのか。共産党・政府のことなのか、中国人のことなのか。
➁ 権力の中でうごめく「民」をどうとらえるか。権力は「民」によるナショナリズムを必要とする一方、常に「民」を恐れているのではないか。
③ 中国の歴史(特に近代史)をどう読み解くか。共産党は歴史を利用する一方、歴史に縛られているのではないか。
上記3つの視座を通じて日中関係も理解したいと考えています。われわれは、政府間の関係だけでなく、真剣に向き合える真の民間交流を展開する必要があります。戦争の記憶を抱え未完のままの「和解」をどう実現するのかも、議論すべき問題です。
研究では、埋もれた事実を発掘する「調査報道」の手法を駆使します。具体的に言えば、歴史資料の収集と質的分析、歴史の当事者の「記憶」を「記録」に換えるインタビュー作業です。さらには歴史の第一報を伝えるジャーナリストの活躍の舞台であるメディアの活用です。権力と対峙しながら、時代を映す「鏡」として存在し続けるメディアが、現代中国や日中関係の「空気」をどう伝えたか、という問題意識は授業で追究するテーマです。史料やメディアを通じて「歴史」と徹底して対話することで「現在」を読み解き、「未来」を透視する学術的作業を試みたいと考えています。

略歴・主要業績

慶応義塾大学文学部卒業後、時事通信記者として27年間勤め、2度計10年間にわたり北京特派員。北京特派員中の2014年、中国外交文書を使った戦後日中関係史に関する調査報道で、ポーン・上田記念国際記者賞を受賞。2020年、早稲田大学大学院社会科学研究科博士後期課程修了、博士(社会科学)。同年より現職。
著書は次の通り。
第22回アジア・太平洋賞特別賞(2010年)を受賞した『中国共産党「天皇工作」秘録』(文春新書、2009年)
『中国臓器市場』(新潮社、2008年)
『中国人一億人電脳調査』(文春新書、2011年)
『中国消し去られた記録:北京特派員が見た大国の闇』(白水社、2016年)
『マオとミカド:日中関係史の中の「天皇」』(白水社、2021年)
『天安門ファイル:極秘記録から読み解く日本外交の「失敗」』(中央公論新社、2022年)
『日中百年戦争』(文春新書、2022年)。

北海道大学研究者総覧 個人ページ

電子メール

shiroyama@imc.hokudai.ac.jp

研究領域

現代中国研究、日中関係史、中国メディア研究、ジャーナリズム

検索用タグ

ジャーナリズム、メディア・情報、公共ジャーナリズム