「間にあるもの」の中で

メディアの語源は「間にあるもの」で、ここから仲立ちをするもの、媒介するものの意味になりました。たとえばメディアの単数形のメディウムは、霊媒、つまり生者と死者の仲立ちをする人を指したりもします。

ですが20世紀の大きな知的発見のひとつは、私たちが何かを考えようとするとき、あるいは他者と対話しようとするとき、私たち自身がそのつどすでにこの「間にあるもの」の中に居てしまうということではなかったでしょうか。たとえば何かを考えようとするとき、考えるその言葉によってすでに言語の中に居るように。あるいは社会と対話しようとするときに、すでに広報や公共性の中に居るように。

このコースで学ばれる言語にせよ文化にせよ、あるいは広報にせよジャーナリズムにせよ、私たちと何かの「間にあるもの」でありつつも、しかも私たち自身がそのつどその中に居てしまうものでしょう。そうした「間にあるもの」について考えることは、あたかも魚が泳ぎながら「水とは何か」について考えるようなものかもしれません。願わくはみなさんもそうした大きな意味でもって、実践的に研究を考えられんことを。

国際広報メディア研究コース長 西村 龍一教授

研究と教育の目的

「メディアとコミュニケーション」から現代社会をみる

本研究コースは、「メディアとコミュニケーション」の視点から現代社会を調査・分析することを研究の基本としています。それは、わたしたちの社会が、高度に情報化し多様化し、同時に、グローバル化とローカル化という両極に分化しているからです。メディアとコミュニケーションの視点を抜きにしては、現代社会は語れません。

国際広報メディア研究コースでは、両者の研究を通じて、現代社会の急激な変化に対応できる行動力を持った人材を育成し、メディアとコミュニケーションに関わる広範囲な領域において優れた研究を遂行できる研究者の養成を教育の目的とします。一専攻となった2019年度からは、さらに多彩なコース融合科目を設け、メディアと観光の融合という新たな知見を備え、これからの時代に求められる人材を育成しています。

専門科目

国際広報メディア研究コースのコース専門科目は、「国際広報」、「公共ジャーナリズム」、「言語コミュニケーション」、「メディア文化」の4つの科目群で構成されています。授業は、各科目群に対応する講座(国際広報論講座、公共ジャーナリズム論講座、言語コミュニケーション論講座、メディア文化論講座)と現代日本学講座の教員、および、学外の専門家が担当します。

国際広報メディア観光学院の特徴の一つに、学外の講師による実践的な授業が挙げられます。コース専門科目では、野村総合研究所の現役コンサルタントが講師をつとめる「国際経営戦略広報論演習」や「広報企画論演習」、さらに、読売新聞社による「実践的メディア・ジャーナリズム論演習Ⅰ、Ⅱ」が開講されています。

また、上記のコース専門科目に加え、メディアと観光を架橋する「コース融合専門科目」でも、野村総合研究所の現役コンサルタントが講師をつとめる「デジタル・コミュニケーション論演習」や、電通による「広報・広告産業論演習」といったメディア、経営の第一線の実務者による授業が開講されています。上記二つの科目は北海道大学の大学院共通科目として指定されており、全学から多くの大学院生が受講します。